RAGとオントロジーは、何が違うのか

RAG は質問に関係しそうな文書を探して生成AIに渡す仕組み、オントロジーは対象と関係を定義した意味の設計図です。役割の違いと、業務でどう組み合わせるかを説明します。

直接の回答

RAG(検索拡張生成)は、質問との関連性をもとに回答に必要な資料や根拠を検索・取得し、生成AIがそれを参照して答えられるようにする仕組みです。オントロジーは、対象・関係・意味・条件を機械が扱える形で定義する考え方で、「意味の設計図」とも言えます。RAG は根拠を取り出す仕組み、オントロジーは何が何とどう関係するかの決まりです。役割が違うため、一方で他方を置き換えるものではありません。

なぜ、RAG だけでは足りない場面があるのか

RAG は、質問と文書の関連性をもとに、回答に必要な資料や根拠を探して取り出します。関連性は文書の内容から見積もるため、内容は似ていても前提の違う資料を拾ったり、別の呼び方で書かれた資料を取りこぼしたりすることがあります。

探した断片どうしが同じ対象を指しているか、どちらが新しいかは、RAG の仕組みだけでは判断しません。

オントロジーは、対象(取引先、案件、部品、材料など)、対象どうしの関係(発注した、使っている、置き換えた、など)、それぞれが何を意味するか、そしてどの条件で成り立つかを、機械が扱える形で先に定義しておく考え方です。どのデータベースに保存するかとは別の、意味についての決まりです。

たとえば、同じ部品でも、用途・材料・工程・条件が異なれば、別の判断対象として扱う、という決まりを定義しておけば、取り出した情報を正しい対象に結び付け、条件の違う情報を混ぜずに扱えます。

RAG だけで足りる場合、関係の定義が要る場合

文書の数が限られ、表現がそろっている範囲なら、RAG だけでも十分に働きます。

扱う対象や関係が多く、時点や出典の違いが判断を左右する業務では、何と何が同じで、どうつながるかの定義が必要になります。

業務での例

以下は説明用の例です。特定のお客様の事例や、効果の数値ではありません。

「A 社向けの部品 B の材料を変更した理由は?」と尋ねたとします。RAG は、この質問に関連する見積書・仕様書・変更の記録などを探して取り出します。

しかし、部品 B が途中で型番を変えていたり、材料変更の理由が承認のやり取りにしか残っていなかったりすると、関係する記録を集めきれません。旧型番と新型番が同じ部品であることや、材料変更と承認の記録どうしのつながりが定義され、記録がその定義に沿って結び付けられていれば、変更の記録と承認の履歴をたどれます。

整理すべき構造

検索の仕組みを選ぶ前に、次のことを決めておきます。

  • 対象の種類:何を 1 つのものとして扱うか
  • 関係:何と何が、どういう意味でつながるか
  • 同一性:別名・旧型番・表記ゆれを、同じ対象として扱う決まり
  • 条件:どの用途・工程・時点で、その情報や関係が成り立つか
  • 出典と時点:その情報がどこから来て、いつ有効か
  • 検索の仕組み(RAG など):この土台の上で、必要な情報を取り出すために使う

AlcheLivrA / MDF での扱い

AlcheLivrA の共通基盤 MDF は、業務の記録・資料・相談の履歴などを、出典・意味・履歴とともに整理し、次の判断で使える状態にします。何の情報か、何と関係し、何を根拠としているかを、判断に使える形にすることを目指しています。

関係をたどれる土台があれば、文書を探して渡す仕組みも、より的を絞って使えます。

設計・製造の領域では、一部開発済みの PrimLoop で、材料・形状・支持・荷重・動作といった工学的な意味と関係を扱うことを目指しています。

関連製品

  • MDF:企業活動・実行・判断・知識をつなぐ共通基盤(開発済み)
  • PrimLoop:設計ナレッジの利活用を支えるエンジン(一部開発済み)

あわせて読む

自社の場合を相談する